もう何年にもわたっていることだが、オープンソースが IT(業界)やビジネス コミュニティーに与える数々の利益を世界中の開発者たちが称賛かつ促進してきた。その華々しい技術革新、市場に提供する新しい事柄の数々があるにしても、オープンソース コミュニティーの本当の価値は、そのコミュニティーそのものである人々の文化にある。一つの共有された気風が共同的な作業モデルや互いの尊敬と一体になり、それが最先端のソフトウェアを提供してきたわけで、これからも提供し続けていくことだろう。そのソフトが、従来からの商業ベンダーといっそう競合するようになっているということだ。
しかし、オープンソースは単に目新しいものや趣味であることを超えた。それは、莫大(ばくだい)なコストを削減できる、その潜在力、そして、最終損益に対して著しい節約効果が得られることが、ハードに圧迫された世界中の企業から認識されるようになったからだ。オープンソース プロジェクトの実装(採用)は今や多くの国々の政府部門においても見受けられるようになった。その顕著な例としては英国、米国、フランスが挙げられる。つい最近、アイスランドがオープンソース モデルに移行するという発表もあった。経費の節約と超過債務の削減を目指してのことだ。
コミュニティーで活動している僕たちにとっては、こうした大々的に報じられるような政府部門の採用に関して驚くに値することといえば、それがもっと速く起こらなかったことぐらいだ。
オープンソースを論証するときに並べ立てられる利点はいくつもある。しかし、その際に不可欠なのは、主要な商業ソフト ベンダーに対して人が期待するのと同じ構造やエコシステムがあることをプロバイダー(サービス提供業者)たちがきちんと示すことだ。この意味で、オープンソースの提供物は適切にパッケージングされている必要がある。多くの IT 意志決定者たちが採用の必要条件と見なしている、ホスティング、コンサルティング、サポート ネットワークまでを一緒にするわけだ。僕が Acquia を創設した理由はそこにある。Acquia は企業ユーザーたちが期待する、サポートおよびサービス レベルの取り決めを提示する。Drupal にとっては、企業サイズの組織がオープンソースを採用するための商業的な媒体の役を果たすのだ。
それでも、オープンソース コミュニティーは最近、二つの重要な展開を目の当たりにした。それらは僕たちが提供するものすべてに対する認識を根本的に変えてしまった。その第一は Red Hat の収益が 10 億ドルの大台に達したことだ。これはオープンソース開発者たちにとって、自分たちのビジネス モデルは利益を上げられるし、成功を収められるという自信をぐっと強めることになった。この画期的な達成は、開発者に意識を向け、かつてないほどの成功を収めている、より多くの組織に対して水門を開くことになるだろう。また、IT 業界にこれだけ長く君臨してきた従来の商業ベンダーたちに対して、さらなるプレッシャーをかけることにもなるだろう。
もう一つの画期的な発表は、マイクロソフトがオープンソース スペースへの参入を選択したことだ。それだけとって見ても、コミュニティー開発の価値がどれだけ重大なものになったかがわかるシグナルだ。このニュースに対してネガティブな反応を予期した人たちもいた。しかし、大規模な商業ソフト組織がオープンソースに投資するというのは事実だ。それをオープンソース コミュニティーは祝い、マイクロソフトに温かい歓迎の手を差しのべるべきだろう。
(今)企業は技術革新とコスト節約の両方をもたらす IT ソリューションを探し求めている。そんな状況だから、オープンソースにかかわることはこれまでにないほどワクワクする時代になった。オープンソース企業が収益 10 億ドルの大台に達し、主導的な商業(ソフトの)企業が新しく子会社を開設してオープンソースに投資している。(そんな今)オープンソース コミュニティーは、最高の日々がまだこれからやって来る(これからまだどんどんよくなっていく)ことを感じるべきだろう。オープンソースはかつて、急成長している自給自足型のコミュニティーだった。それが今では、世界中の企業にパワーを供給するであろう本格的な提供物を備え、商業ソフトに並ぶ本物の選択肢として認識されるようになったのだ。