Sitecore の FUD

2011 年 11 月 1 日 - 02:17 -- ドリース バイテルト

商用 CMS を販売している Sitecore が最近、「オープンソース CMS のサイレン ソングThe Siren Song of Open Source CMS」という白書を公開した。そこにはちょっとした「古き良きオープンソース FUD(“fear, uncertainty and doubt”の略。「怖れ、不確かさ、不信」)」が見られる。

「ギリシャ神話において、サイレンとは、近くを航海する船乗りたちを誘惑する(半人半鳥の)女たちを指しました。うっとりするような音楽と歌声に引かれた船は彼女たちのいる島の岩壁にぶつかって難破してしまうのです。企業向けソフトウェアの世界において、オープンソース アプリケーションには、多くの企業にとって抵抗しがたい魅力があります。しかし、注意してみると、それには(サイレンと)同じように破滅を招く結果につながる可能性があります。止めどもなく上昇していく開発コスト、予測不可能な遅滞、緊急のサポート案件に対する反応もフラストレーションがたまるほど遅く、ダウンストリームのアップグレードと拡張にかかるコストは急激に上昇していきます」

この場合、彼らはこうした FUD をすべて言わせるために、あるデジタル エージェンシーの CEO を仲間に入れている。あたかも、それによって、その FUD の信憑性(しんぴょうせい)がさらに高まることになるか、あるいは、彼ら自身の気持ちを隠せるかのようだ。

「実際のところ、agencyQ はまず、WordPress(ブログ用のオープンなプラットフォーム)と Drupal(オープンソース CMS アプリケーション)を使って小規模のシステムをいくつか無事にデプロイできました。そのあと、Drupal を使って企業サイズのより大きなサイトを実験してみました。… わたしたちがすぐに気づいたのは、Drupal の能力はとても幅が広いけれども、奥行きがほとんどないということです(膨大な機能があるがどれも不十分だということ)

どんなプラットフォームであっても、単純なサイトでごく限られた経験を積んだだけで(すぐに)複雑な実装を試してみようとするのは、Drupal の限界というよりは、単にその実装者が経験不足であることを露呈しているだけだ。プロファイルが高く、高度な機能を備え、ボリュームの大きな Web サイトに Drupal を拡張できることは、whitehouse.gov サイトが存在すること自体ですべて示されている。

「ブリーンはこう言います。『サポートがないということはオープンソース CMS プロジェクト全体に波及効果を与えている。システムの機能性という点に関しては白紙の状態でスタートしてわけだから、あらゆることが起こり得る。そして、問題が起こったときにすぐ対応してくれるサポートがないということは、うかうかしているとデッドラインが迫ってきてしまうことを意味する。これはサービス駆動型のエージェンシーとしては決してビジネスにいいことではない』。…すべて最終的には説明責任を負えるかどうかにかかっています。これについてはブリーンがジョークでこんなことを言っています。『ハイテク業界では、顧客にとって唯一のソース プロバイダーになりたいときに営業担当者が使う、昔からのこんな言い回しがあるんだ。「首を絞めるなら一つの首にしたいでしょう」(万一、トラブルが起こってユーザーが業者の首を絞めてやりたいくらいだと思った場合のブラックユーモア)。これはとても視覚的にわかりやすい表現だけど、当を得ている。ソフトウェアで何かがうまく機能しないときに必要なのは、一つの電話番号に電話をし、自分を助けてくれる一人の人と話すことだ』」。

オープンソース CMS にはいいサポートがないという認識は腹立たしい。Drupal の場合、(ユーザーである)企業が「絞める一つの首」としては Acquia に目を向ければいい。または(対応に)幅の広さが必要なら、600,000 人の開発者がいるコミュニティーを活用することもできる。

「オープンソース CMS を使おうと力を合わせて努力しましたが、サポートが存在しません。ブリーンには、オープンソース(ソフト)の所有者にかかるトータル コストTCO. Total Cost of Ownershipが極めて大きいことがわかりました。それに加えてサポートがないということで(彼らの)努力も限界に達しました。Web サイトの開発プロジェクトにおいて、CMS ソフトは通常、実装コスト全体の 5 %(程度)を占めます。彼は言います。『でも、オープンソース CMS を選択することでソフトウェア コストの 5 % を節約しても、それによって 95 % にあたる『他の』コストを著しく押し上げることになる。これじゃあ、どんな基準に照らしても勘定が合わないよ』」。

彼らの白書に挙げられている数字では計算が合わない。彼らの話によれば、Sitecore ライセンスはプロジェクトの実装コスト総額のたった 5 % にしか相当しないことになる。(しかし)アナリスト(分析)企業の Real Story Group によると、Sitecore では1回の契約当たりにライセンスの占める金額は平均で 100,000 ドル(本稿執筆時 約 770 万円)であることがわかっている。ということは、Sitecore の平均的なプロジェクト コストは 200 万ドル(同1億 5400 万円)なのか?だとしたら、平均的な Drupal プロジェクトよりもはるかに多い。

みんなはこれまでに、この類(たぐい)の FUD をどこで目にしただろうか?オープンソースの代替品から競争の風が吹き寄せてくるのを感じ始めている商用ソフトのベンダーならどこでも、その FUD の出どころになり得る。僕はオープンソースと Drupal にとって、この白書はひとつの勝利だと見ている。彼らは僕たちにケンカを売らざるを得なくなっているからだ。Drupal は彼らに打撃を与えている。Sitecore には恐れるだけの理由があるということだ。

ひょっとしたら、Sitecore に聞こえているサイレンは、彼らが助けを求めて呼んだ救急車から来ているのかも?(^^)

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